せめてドアチェーンは取り付けよう。

大学のサークルで、低予算の映画を作ることになった。人里離れた山奥の古民家という設定で、動物と寝食を共にするヒキニートのドキュメンタリーという設定だ。何しろ低予算。演技ができる人を呼ぶお金もないので、なんと製作の側だった俺が主演を務めることになった。主演と言っても登場人物は俺。そして動物。動物は猿が理想だったが、予算がないから犬だ。サークル内のメンバーの家で飼っているチワワを毎回連れてきてもらう。

スタジオは大学の部室棟。どこの部室だったのかもわからないが、鍵が壊れていて勝手に入り込めた、たぶんここ数年使われていないのであろう、倉庫のような部屋の奥の一部分を衝立で囲って、部屋のセットを作り上げた。部屋の中だけが舞台となるため、このセット作りには予算の多くをかけて、大道具の力の見せ所だ。ディテールにこだわり、映るかどうかもわからないところまでメンバーで意見を出し合い作り込んでいく。アパートの玄関とはこんなイメージだとか、せめてドアチェーンは取り付けよう。とか。鍵やドアチェーンをつけることで、芸人が演じるコントのセットのような、明らかに偽物のドアとは一線を画する。

あとはストーリーだが、脚本はだいたい出来ているのだけど、演者が俺とチワワだから、思い通りに行かないことも多い。そしてストーリーはぐだぐだなのに、メッセージ性はかなり強い。ヒキニートの設定なのにやたら電話をしたり、独り言という形で状況説明したりするので、俺の棒読み演技力では、真面目にやっていてもコントのようになってしまう。

狭いスペースで撮影を行うので、セットとスタッフがぶつかって撮影が中断されるということもあり、特にこだわりぬいた玄関ドアの鍵は、ドアチェーンの重さが下地とあっておらず、何度も脱落して大きな音を立てた。素人が映画を作るというのは、本当に大変なことなのだと学んだ。